JIADSが発表する論文絡みで重村さんが極めているところがあるので、
いまさら理工学的なことを述べても自分の首を絞めることになりかねません。
20数年前に私が技工士になってからしばらくは、適合というと
「いかに支台歯に密着させるか」という感覚があったように思います。
30μのセメントスペースを確保するには、コレをあぁしてこぅして、
マージン1㎜はこのようにしてなどなど。
CAD/CAMも色々とありました。
身近で古い(?)ものではエンジェル・クラウンですが、適合については酷いものでした。
CAD/CAMによる歯科への浸透は未来永劫ない、と確信を持てるほどのシロモノでした。
某車メーカーが製作したCAM機で、もちろん当時としては最先端だったのでしょうが、
「適合させるためにこれだけ調整しなくてはいけないのなら、使い物にならない」と
ため息混じりに何度も思ったものです。
現在のCAD/CAMはマージン、セメントスペースなどの内面側において
非常に高いレベルでコントロールされていて、ドクターの適合に関する評価も高いものがあります。
さらに、CAMが3軸から4軸~に進化したため、削りだし表面もかなりキレイですし、外側の形態においても、パソコン上で設定するだけで、歯冠形態をかなりキレイに作り上げるというところまできているようです。
これまでロストワックスで「いかに支台歯に適合させるか」を目標に取り組んできましたが、
試適が終わったメタルフレームを見てガッカリすることのほうが多かったと思います。
というのも、セメントスペースを補償したつもりでもそれが不十分で、連冠やブリッジなど
の場合はいつも内面の隣接部が調整のため削られているからです。
模型上では良い感じですし、私たちとしてはそれで良しと考えているものです。
サヤカでは「いかに入りやすく、適合しているか」を考え、過補償については
それなりに取り組んできたつもりですが、最近のCAD/CAMは一瞬のうちにそういった私たちを
飛び越えていった感があります。
CAD/CAMの場合、まず、密着させるという適合を設計の段階から考えていません。
長いブリッジでも、1歯1歯のセメントスペースは完ぺきに確保されるのです。
ロストワックス法を用いて適合させるときのキーワードは「不確定要素の徹底除去」ですが、
CAD/CAMにおいては、除去する以前に「不確定要素」は存在させません。
パソコン上の設計の段階で、セメントスペースを含めた密着させない適合を目指しています。
(適合していない適合ということです)
技工をやっていて辛いことの一つに,作った技工物が「全然入らないよ」と、
再製作になることがあると思います。
入るためにもっとできたことは無かったのか??と自問自答することもありました。
埋没材や鋳造機などが進化した現在でも、適合をロストワックスで目指す場合には、
さまざまな「不確定要素の除去」が必要です。
それは逆に言うと「確定しているところは適合させる」ということです。
セメントスペースという名目の過補償分を支台歯で設定するというとスペーサーを使いますが、
たとえばスペーサーを30μ塗布したとしても、出来あがってくるブリッジの内面に確保される
スペースは30μではないわけです。
技工に関わらず全ての物事に関して、途中の工程について追求されたとき人は
「ちゃんとやっている」つもりでいますし、結果が伴わない場合「自分以外」
に問題点を探すものです。
入らないと言われた場合は何処に問題が???
ロストワックス法で模型上で30μのセメントスペースを均一に確保しながらマージンは適合している、というフレームは非常に難しいと思います。
支台歯の数が増えたり、テーパーがきつくなったり、補綴物が大きくなればなおさらです。
CAD/CAMではそれを模型上では当たり前に削りだしていくのです。
あと10年20年と経ったとき、歯科医療、歯科技工のどの部分まで機械が入り込んで
いるのか、などと最近は少々不安にもなります。
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