2013年12月5日木曜日

JPI.co-crハンズオンコースに参加して   ‐恩田典之‐


JPI Co-Cr 2day コース

 

重村宏先生が主宰するJPIの技工コースに参加してきました。

今回は「コバルトクロムをクラウンブリッジに応用する」というテーマで2日間、埼玉歯科技工士専門学校で行われました。

僕は以前大阪でのJIADSのインプラントコースに参加して以来、重村先生に何かと声かけていただき、お会いしたりしていましたが、今回久しぶりに実習付の本コースに参加させていただきました。

 
[ Report ]

コバルトクロムとは100年以上の歴史を誇る、工業界で開発された合金である。

貴金属の相場に左右されない安価で強いメタルである。

 

そもそも投機の対象として価格変動する貴金属を実業として我々が使うのはナンセンスであることを思い直さないといけないということ。既成概念を取り去らないといけない。

 

医療界では、かつて人工関節などではジルコニアが使用されていたが、ジルコニアの低温劣化などで破折例が多数報告され近年ではほとんどがコバルトクロムに置き換わっているとのこと。

歯科では、金属の代替材料としてジルコニアがブームとなったが、破折について、安定性について今後よく考えなければならないということ。

 

その点コバルトクロムは歴史もあり安心できる材料である。

しかし、

今までのコバルトクロムのイメージ・・・

比重は金属の半分(長所)

耐食性に優れる(長所)

高融点 膨張収縮が大きい 加工しにくい(短所)

硬い(長所?短所でもある)

生体親和性は??

 

そのような、イメージ、特にネガティブなイメージは全て誤解であることが分かった。

 

加工法、特に鋳造は押し湯効果を発揮するスプルーイングや独特なフォーマー、ハーフパイプテクニックにより、金合金にも劣らない精密な鋳造が出来る。

しかもこのテクニックを使えば高価な高周波鋳造機が無くても遠心鋳造で十分な鋳造が出来るということ。

これはこれからコバルトクロムも鋳造を始める、小規模ラボでも優れた鋳造体ができるということだ。

研磨もとにかく硬いイメージのコバルトクロムだが、重村先生の指導で、思ったよりあっけなく完了した。もちろんパラのように簡単にはいかないが、スカッと光って不動態化独特の手触りを感じると研磨し甲斐というか、技工の喜びも感じる。

 

 

研磨のバーやポイント、研磨剤に至っては重村先生が歯科界のみならず工業界の材料まで調べ、試して、これ!というモノを紹介してくれた。

他業種までもリサーチする探究心には全く頭が下がります。

いずれ歯科材料メーカーからコバルトクロム用の優れた研磨剤が登場するでしょう。

 

最大のネガティブなイメージとしてアレルギーや生体親和性のことがあるが、

これこそがコバルトクロムの歯科金属としての利用にブレーキをかけているように思います。
 
 

結論を言えば 

全くもって問題ないということ。安く、強く、安全です、ネガティブなイメージがあるとすればそれは誤解です。

 

ということを発信していかないといけないな、と思いました。

 

コバルトクロム、という合金の名前がいけないのかもしれません。

確かにコバルトもクロムもアレルギー物質としてパッチテストで挙げられるものです。

しかし、それは単元素での話で、コバルトクロムは合金であるということ。

 

合金化することにより、金属表面に酸化クロムによる強固な不動態化膜ができる。

これにより、超安定でイオンが溶出しない、プラークが付かず、いつまでもツルツル、粘膜に優しい補綴物を作ることができる。

イオン化や対酸性に強いゴールドも補綴物として見た場合、柔らかさによる表面の傷で汚れや曇りが見られるということも例として見せていただきました。

確かに修理などで預かった金床は赤茶にくすんでいることが多いと思う。

 

一方、チタンは生体親和性の材料としてチタン神話が出来るほど、今まで扱われていたが、コバルトクロムと比べると補綴物の材料としては疑問が残るということ。

チタンも表面に不動態化層が出来、耐食性が強いがその不動態化層が弱いということ。

キズが付くとそこから劣化、溶出する。

チタンでアレルギーになる人も多数いるらしいです。

研磨が不十分なアバットメントなどは最悪だと思う。

生体親和性の高さが弱点でもあり、バクテリアやプラークの温床になるというのも聞いたことがある。

 

臨床的データとして、阪大の高永和教授によると、多数のアレルギー患者を診てきて重篤な1000症例以上の中でもコバルトクロム合金によるアレルギーは一つもなかった、というデータを提示している。

 

しかし、口腔内で調整した際に出る不動態化膜を持たないコバルトクロム粉は注意しなければならないだろう。(新鮮面に不動態化膜生成されるまで8分ほどかかる)

 

コバルトクロムを扱う上で注意しなければならないことをたくさん教えていただきました。

 

ロー着の実習もしました。

デンツプライで販売している、プラズマ溶接、赤外線ロー着システムの

クアサープラスを実際に使ってみました。

 

本当に簡単に、高精度なロー着が出来ました。慣れると、仮着からロー着まで10分弱で出来てしまうということです。

気になる方は、デンツプライ三金さんがデモしてくれるとのことです。


 
 


コバルトクロムでメタルボンドを焼く際に誰もが悩まされるであろう、酸化膜の上手な処理の仕方もおまけの実習で教えていただけました。

詳しくは書きませんが、色々目からうろこが落ちました。

 
早速臨床で応用してみました
 


2日間、長いな、と最初は思いましたが、もっと受講したい、と終わるころに思いました。

少人数ながら志を共にする受講生と和気藹々とした時間がとても有意義でした。

受講して本当に良かったです。

 

サヤカでは既にコバルトクロムの技工を扱っていますが、新たに取引先のドクターからコバルトクロムの問い合わせが多数来ています。

税率の関係もあるそうです。

ある意味今がビジネスチャンスでしょう。

症例に合ったマテリアルセレクションでニーズにこたえられるのもラボとしての役割であると思います。

コバルトクロムは今後も世の中の風潮と共に目が離せない筋であることは間違いありません。


 

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