今日は浦和区役所保健センター4Fで行われた学術講演会に参加してきました。
演題 「インプラント補綴を考える」
講師 東京歯科大学臨床教授 武田孝之 先生
まず先日NHKで放送されたクローズアップ現代の放送を受けてという話から入りましたが、武田先生の医院では一貫して「インプラント治療の保証はしない」という姿勢を貫かれているそうです。その理由は「物を売っている行為ではなく、人の体を相手にしているものなので」ということでした。
改めて考えてみると確かにそうだなとも感じましたし、先生の医院では進行中のインプラント予定の患者で、放送後に治療が中止になった患者さんは一人もいなかったそうです。
ただ、放送後はセカンド、サードオピニオンとして来院する患者さんが増え、とられる時間と報酬のアンバランスに困っているとのことでした。
何のためのインプラント治療か?と問われれば、それは骨や歯牙などの支持組織を失わないために行われるものであり、それは体全体の健康に繋がることでもあり、健康寿命を短くしないためのものでもあるということです。
ちなみに、日本人の健康寿命と介護期間ですが
男性の平均寿命79歳に対して、健康寿命が73歳だそうです。(介護期間6年)
女性の平均寿命は86歳で、健康寿命は78歳です。(介護期間8年)
そして臼歯がしっかり上下で噛めることは平衡感覚にとって重要である、バランスのとれた食品を摂っているのといないのでは、要介護になるリスクがこれだけ違ってくるなどを、具体的な例や実演を交えながら説明し、だからこそ「自分の健康に投資するべきであり、その入り口は歯科にある」とおっしゃっていました。
歯科大学では今後の歯科医療の取り組みの中で「口腔内科」をつくっていくともいっていましたが、それは本当に良いことだと強く共感しました。
日本人の平均的なデータからすると、45歳までは歯牙の欠損がほとんど無く欠損は46歳から始まるそうです。
例えば上下の大臼歯が欠損していた場合で患者の経済的理由から上下どちらかしか直せないとした場合、どちらを治したら良いか?という問いかけをされ挙手を求められました。
下顎、で手を挙げた先生の方が多かったと思います。 見えるからですかね。
武田先生の答えは上顎でした。
理由は、上顎はフレアアウトする方向へ力が加わるため、欠損が始まった場合崩壊するスピードも早いからだそうです。
これは「カマーの分類」からも説明していました。 カマーの分類は
こちら
さらに、GBRなどの骨造成においても、例えば下顎の骨造成は充分に期待できるが、上顎前歯の場合はフレアアウトの力が加わるため、数年後には骨がなくなる可能性が高いとのことでした。
インプラント治療について、患者さんは何年もったら満足か?
10年前は70%の人が「10年もったら満足」と答えていたそうですが、現在では72%の人が「20年もったら満足」と答えているそうです。
上部構造体については「使っても10年」という考えでいるそうです。
インプラントは何年ももっても、上部構造はもたないし、だからこそ作り直しが必要ということです。特にブラクサーは材質から防衛しないとすぐに壊れるので、積極的にハイブリッドを選択するそうです。
ナイトガードで保護すれば・・・という考えも甘いらしく、ナイトガードを作った患者さんの10%しか指示通り使っていないそうです。
基本的な考え方として「永久補綴物は無い」とし、半透明ジルコニアは絶対使っていはいけない、間違いなく他が壊れると表現されていました。
患者さんの今の口腔内の状態が平均に比べてどの程度崩壊しているのか、また今後の治療方法によってはどのようになってしまう可能性があるのかを明確に示すと同時に、治療をすることにより食生活や平衡機能が改善して要介護リスクが減るという明るい将来を示すことで、武田先生の医院では9割がインプラント関連の治療だそうです。
「インプラント補綴を考える」という漠然とした演題だったのですが、学会などで見る講演会とは随分と違う、とても内容の濃い素晴らしい講演会でした。
武田先生の講演内容は多岐にわたっているため、全てを書くことは出来ませんが、折にふれ紹介していければと思っています。