これまで「セレックシステムで削り出された2ケイ酸リチウムセラミックをクリスタライゼーションする」という作業は、かなりの本数を経験させていただいていますが、削り出された単冠がこれまでの間接法と比べてどうなのか?というのは、特に気にしませんでした。
エンジェルクラウンの頃でしたか、そういった議論が多かったので少々鈍感になっているのかもしれません。
正確に比べるためには条件設定など合わせなければならず、ここでの話はそういう次元のモノではなく、たまたま関節法でe.maxを製作するつもりで印象は採ったけれど、その後「読み込めて削れたから模型は使わないで作ってください」と、削り出した冠と間接法用の模型の両方を預かったケースがあったので、それなら削り出されたセレックは、連合印象の模型にどの程度フィットしていくのか?というのを簡単に見た程度のものです。
模型は通常の分割模型として製作しました
セレックシステムの3D光学カメラにより削り出された2ケイ酸リチウムセラミックです
模型をスキャンしたものではありません
模型に入れようとしましたが、コンタクト強めの設定で削っているため入りません
(コンタクトの強弱は設定により変えられますので、元々のクオリティの問題ではありません)
クリスタライゼーションし、模型に置いたところ
分割模型にして、軽く押し込むとキツイけれど入ります
ここら辺は分割復位式模型の取り扱いと、副歯型式模型の取り扱いに通じるものがあります
まず内面の適合状態の観察ということで、代替品ですがジンジファストで見てみました
良い感じではないかと思います
マージン以外は
プロセラシステムのコバルトフレーム単冠と比べてみました
こちら咬合面分にポストが掘ってあり、ジンジファストが容易に取れず模型についたままです
どちらも天蓋のところのスペースが少々多めで、軸面は程好く締まっています
よく見ると、プロセラの方が軸面~マージンにおいてタイトな仕上がりになっているのが分かります
マージン部ですが、セレックでは部分的に適合しているところがありますが
深いマージンやべベルっぽいトコロなどは及んでいません
トリミングされた模型を読み込む方式と、口腔内の支台歯を読み込む方式の違いがハッキリ出たのだろうと思います。
さて、セレックですが『最先端の3D光学カメラを使用して患部を撮影(スキャン)し、患部の歯列をモニター上に再現。そのあとはコンピュータの3D画面上にて修復物を設計し、ミリングマシンがデータをもとに作製』とメーカーのサイトに書かれています。
こちら
パッと読んだ感じではナルホドなですし、今後は印象そのものが無くなり全てが光学印象になるとも聞きますが、現場で模型を扱っている側からの意見としては、形成の良し悪し、歯肉の被り具合などにより印象のクオリティにはかなりの差が出るのではないか?というのがあります。
天蓋、軸面などはとても良い感じに仕上げられていると思いましたが、ドクターが削ったところと削っていないところの境目であり、歯肉と歯との境目である「マージン」を模型製作でいう「トリミング」をせずにカメラやレーザーで光学スキャンしてキチンと読み込むことは、やはりまだ難しいのだろうなと思いました。
これまでドクターと技工士の「手法」や「技術」や「材料」の進化でマージンの精度を上げてきましたが、光学印象となると、「技工士の●●」が無くなります。
例えば支台歯の平行性でも、「技工士の●●」で製作可能でしたが、光学印象でダイレクトにフレーム製作となった場合、平行性がとれていないケースは製作不可になります。
ブリッジになれば、その難易度は更に増します。
今回のケースでも、読み込める「マージン以外」の適合は全く問題ないようでしたが、唇側、隣接、舌側とも、深めのマージンは残念ながらアンダーでした。顕微鏡レベルでは決して見てはいけないレベルです。。。 べベルっぽいところなど、全く読み込めていません。
ヨーロッパ式に接着剤がソコを埋めると言えば聞こえはカッコいいですしそれまでですが、やはり将来はマージンの適合も精度を上げていく方向で改良されたり手法が変わっていくのだろうと思います。
「形成を浅くした方が良いのか」「圧排の仕方に工夫が必要なのか」「光学印象の方式によっては違うのか」などなど、今度シロナの小林くんに聞いてみます。
左がシロナの小林君、右は大信貿易のバシコ氏