日本の技工士として生きていくのは、結構大変だなと思います。
大量生産型や、企業の擁護の中など、背景による差はありますが、製造業における一般的な単位時間当たりの生産性を上げるには、厳しいものがあります。
もう10年以上前のことですが、労働白書のようなものを神田に探しに行って調べたときには、国内製造業の単位時間当たりの生産性は3,800円前後でした。
2008年の中小企業白書による単位時間当たりの生産性は、製造業で3,838円だそうです。
そう、あまり変わっていないんですね。
では技工士は一体どのくらいなのか。
私が以前勤めていたラボで、社員6~8名くらいを対象にデータをとりました。
半年くらいデータをとり平均値を求めると、新卒~卒後3年程度で担当は保険のインレー、クラウン、ブリッジ。1時間当たりの生産性はなんと1,100円~1,600円、酷いものになると700円くらいというのもありました。
卒後3年~で前装冠などを担当しているものでも、2,200円程度でした。
単価が高めの前装冠を担当するものでは、それでも2,900円あたりがやっとです。
メタルボンドを担当するものになると様子が一変しました。
4,800円から高い者では8,800円にまで跳ね上がります。
この数字は模型作りを自分で行った上での計算によるものです。
ラボによっては違法と分かっていながら、資格のない一般の人や学生に模型製作をさせているところもあるので、そういう場合は純粋な数字は出ないと思います。
また、生産性と言っても、本来は技工所全体として出す数字であり、集配、伝票、その他一般事務などを含めて出す数字からすれば、前述の数字は高めに出て当然という見方も忘れてはいけません。
とりあえず、ザックリ見てみるとこういった数字が並ぶわけですが、我々がキチンと存在意義を保ちながら、同時に可及的にマトモな生活を送るためにどうしたらいいかということを考えるわけですが、全体の生産性を上げるためにと考えると私なりに大きな道は5つくらいはあると思っています。
全部は書けませんが。。。
一つ目は、手を早くすること。
何をやるにも手が遅いというのは致命的です。3,000円のクラウンの仕事をするのに、トータル1時間たらずで終わる人と、2時間必要な人とでは、単純に考えても倍以上の能力差になります。これは事務作業でも同じです。遅い人は何をやっても遅いものです。
20%遅いというだけでも、週換算、月換算で見た場合、とんでもない差になって現れます。
同じことをするならもっと早く、と何をやるときも常に意識できるかどうかが大切であり、年数だけ重ねた人が隣の遅い人と比べて勝っているなどと満足していたり、早くしなければいけないと考えなくなってしまった場合などは、人生終わったも同然ですw
これは技工料金を上げるより、はるかに効果的だと思っています。
技工料金を上げることはリスクが伴います。
仕事が減る、無くなるかもしれません。インレー、クラウンの料金を100円上げたために9件の取引歯科医院全てに断られて廃業した先輩を知っています。
また、以前にも書きましたが、20%のクオリティを上げるために、倍の時間を要するというのは普通にあることです。(安すぎなど、程度によるものもありますが)
そう考えると、いかに無駄を省き、手を早くするかということは、技工士という技術職においては最高レベルで大切な事ではないかと思っています。
二つ目は、工夫をし効率化を図ること。
手が早いだけでは工夫がありません。せっかく脳みそがあるのですから、色々と作業工程などをみなおし、無駄の排除を模索するべきだと思います。そのチャンスを妨害するものは、明日の天気を考えないよほどの能無しか、保守的な己自身です。
作業の好き、嫌い、面倒、なんで俺が、あいつの手伝いは、など効率化を妨げる要因は、客観的にみると下らないことばかりです。
大きな企業では、部署のトップが変わるたびに仕事のやり方そのものが変わったりすることが、当たり前にあるそうです。そうして改革、成長を繰り返すものという自覚が自然に植えつけられることもあるのだと思います。
慣れ親しんだやり方があったとしても、常に上を目指して取り組む前向きなチャレンジ精神があれば、「チェンジ」は難しいことではないと思います。
こういった出来そうで出来ない、やっていそうでやっていないことの積み重ねが、生産性(単位時間当たりの売上高)を変えていくものではないかと思います。
技工だけの生産性を考えた場合、全体で4,000円台には乗せたいところですし、その意識を持ち続け、工夫をし続けることが重要だと思います。
希望を持てなくなり、辞めていく技工士は多いです。
離職率は70%台とかでしたか。
何が問題なのか、どうすれば少しでも問題を解決する方向に動けるのか、何が邪魔しているのか、などなど、たまに考えるようにしていますし、考えはスタッフや研修生には伝えているつもりでいます。
出来ることなら、技工士という、人のためになり、人に喜んでもらえる仕事を、能力のある人が末永く明るく前向きに取り組んでいけたらと思っています。
機械化されるところも増々ふえるでしょう。
いつか遠い未来は、医療行為そのものがコンピューター管理のもとに機械化されるのかもしれません。そうなると医者も技工士も必要ないですね。
そんな遠い未来を想像して恐れていても仕方ないですから、明日から取り組めることを、断続的にでも続けていけたらと思っています。